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事業承継とは?流れ・期間・費用をM&Aアドバイザーが全解説

「そろそろ会社を誰かに任せたい」「後継者がいない」——この記事では、M&Aによる事業承継の全プロセスを、実際に案件を担当したアドバイザーの視点で解説します。流れ・期間・手数料の実態から、失敗しないための仲介会社選びまで包み隠さず公開します。

事業承継とは?M&Aによる第三者承継が増えている理由

事業承継とは、会社のオーナー経営者が引退・世代交代・売却などの理由で、経営権を次の担い手に引き継ぐことです。大きく分けると「親族内承継」「従業員承継」「第三者承継(M&A)」の3つがあります。

近年急増しているのが、M&Aを活用した第三者承継です。理由は明確で、後継者不在の中小企業が増えているからです。日本の中小企業経営者の高齢化が進む中、「子供に継がせたくない」「適切な後継者社員がいない」という経営者が多く、M&Aによる売却が現実的な選択肢として選ばれています。

また、業績が好調なうちに「利益を確定したい」という経営者も増えています。市況の変動が激しい業界では、好条件で売却できるタイミングを逃さないために、M&Aを積極的に活用するケースも多くなっています。

M&Aによる事業承継が選ばれる主な理由

①後継者不在(最多)、②市況変動の中での利益確定、③業容拡大のためのグループ参画、④個人保証・担保の解放、⑤従業員の雇用安定化。どの理由も「一人で抱え込まず、プロに任せる」という判断が背景にあります。

事業承継の流れ:相談から成約まで8ステップ

M&Aによる事業承継は、おおむね以下の8ステップで進みます。各フェーズで何が起きるかを理解しておくことが、スムーズな進行の第一歩です。

1
1〜2週間
初期相談・秘密保持契約(NDA)締結

M&A仲介会社またはFAに相談。秘密保持契約を締結した上で、会社の状況をヒアリングします。この段階では一切の情報は外部に漏れません。

2
2〜4週間
企業価値評価・アドバイザリー契約締結

財務諸表をもとに企業価値を算定。売り手の希望価格と市場価格のすり合わせを行い、仲介会社と正式なアドバイザリー契約を結びます。

3
1〜2ヶ月
売却資料(IM)作成・買い手候補へのアプローチ

会社概要書(インフォメーション・メモランダム)を作成。仲介会社が保有するネットワークを通じて、匿名で買い手候補企業にアプローチします。

4
1〜2ヶ月
トップ面談(経営者同士の顔合わせ)

関心を示した買い手候補と売り手経営者が直接面談。会社の現状・将来ビジョン・従業員への思いを伝える重要な場です。複数社と実施することが多いです。

5
2〜4週間
基本合意書(LOI)締結

買い手候補が絞り込まれ、価格・条件の大枠で合意。法的拘束力は限定的ですが、この段階で独占交渉権が発生します。

6
1〜2ヶ月
デューデリジェンス(買収監査)

買い手側が会計士・弁護士を起用して、財務・法務・税務等の詳細調査を実施。売り手は各種書類の提出対応が必要です。

7
2〜4週間
最終条件交渉・最終契約書(DA)締結

DD結果をもとに最終価格・条件を交渉し、最終合意書を締結。この契約書の内容が非常に重要です。スモールM&Aであっても弁護士のサポートを強く推奨します。

8
クロージング
株式譲渡・クロージング・引き継ぎ

株式の引き渡しと代金の支払いが完了し、M&Aが成立。その後、経営権の引き継ぎと従業員・取引先への説明が行われます。

期間はどのくらいかかるか:平均8ヶ月のリアル

「M&Aはどのくらいの期間がかかるのか」は、売り手オーナーが最も気にする点のひとつです。実務経験をもとにお伝えすると、相談から成約まで平均8ヶ月程度かかることが多いです。

案件によって大きく幅があり、スムーズに進めば3〜4ヶ月で成約するケースもありますが、買い手探しに時間がかかったり、デューデリジェンスで問題が発覚して交渉が長引いたりすると、1年以上かかることもあります。

「早く売りたい」という焦りが最大のリスク

「早く売りたい」という気持ちは理解できますが、焦って最初に声をかけてきた仲介会社と急いで契約するのは禁物です。仲介会社は複数社に相談した上で、最も信頼できる担当者を選んでください。早まってもいいことはありません。

費用・手数料の実態:売り手と買い手で大きく違う

M&Aの費用として最も重要なのが仲介手数料です。一般的にレーマン方式(成功報酬型)が採用されており、M&A金額に応じた料率で計算されます。

売り手手数料と買い手手数料は大きく異なる

多くの売り手オーナーが驚くのが、売り手側と買い手側の手数料が大きく異なるという点です。仲介型の場合、同じ取引に対して売り手・買い手双方から手数料を受け取る構造になっており、その比率は各社で異なります。

最近は金融商品取引法に基づく重要事項説明が義務化されており、契約前に仲介会社が説明してくれるため、知らないまま成約することはなくなりました。ただし、契約前に必ず「売り手側の手数料はいくらか」「買い手側の手数料はいくらか」を確認することをおすすめします。

レーマン方式の計算例(目安)

譲渡金額5億円の場合:5億円×5%=2,500万円(概算)。ただし各社で料率・最低手数料・計算方式が異なります。必ず事前に確認を。

弁護士費用も別途必要

仲介手数料以外にかかる費用として、弁護士費用があります。スモールM&Aでも売り手側は必ず弁護士をつけることを強く推奨します。最終契約書の内容は非常に複雑で、内容次第では売却後に思わぬリスクを負うことがあります。弁護士費用は契約書の交渉サポートで20〜30万円程度が目安です。

従業員・取引先への影響:契約書で縛ることが最重要

売り手オーナーが最も心配するのが「従業員はどうなるか」「取引先との関係は維持されるか」という点です。結論から言うと、これは相手(買い手)と契約内容次第です。

「従業員の雇用を守ってほしい」「取引先との関係を維持してほしい」という希望がある場合は、必ず最終契約書に明記することが必要です。契約書で縛っておかないと、売却後に何が起きても文句は言えない、というスタンスでいないと事故ります。

口約束は意味をなさない

「従業員は大切にします」「ブランドは残します」というトップ面談での口約束は、法的には何の意味もありません。大切なことはすべて契約書に書いてもらうことが絶対条件です。弁護士の同席・サポートが非常に重要な理由がここにあります。

事業承継税制とM&A売却:どちらを選ぶべきか

事業承継の手段として、M&A売却の他に「事業承継税制(贈与税・相続税の特例)」という選択肢があります。これは後継者への株式贈与・相続時の税負担を大幅に軽減できる制度です。

ただし実務上は、M&A売却を選ぶ経営者が圧倒的に多いです。事業承継税制は制度が複雑で、親族内に後継者がいる場合にしか使えないという制約もあります。M&Aアドバイザーの立場では、「こういう制度もありますよ」と情報提供はしますが、M&A売却と比較した上で経営者自身に選んでもらうのが基本的なスタンスです。

事業承継税制が向いているケース

後継者(子供・親族)がいて、将来的に会社を続けてほしい場合。一方、後継者不在・現金化したい・会社をより大きな組織の下で成長させたい場合はM&A売却が適しています。税理士・M&Aアドバイザーの両方に相談した上で判断することをおすすめします。

売れる会社・売れない会社の判断基準

「自分の会社はM&Aで売れるのか?」という疑問を持つ経営者は多いです。実務経験から言えば、赤字・債務超過・かつ他企業と組んでも再生が難しい企業は売却が困難です。

逆に言えば、赤字でも買い手によっては再生可能と判断されれば売却できることがあります。業種・顧客基盤・技術・人材・地域優位性など、財務数値以外の強みも企業価値に影響します。

売れやすい会社の特徴

売却が難しい会社の特徴

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仲介会社の選び方:担当者の見極めが最重要

事業承継を成功させるために最も重要なのが、仲介会社・担当アドバイザーの選択です。手数料・実績・マッチング力も重要ですが、最終的には「この担当者を信頼できるか」が最重要の判断基準です。

複数社・複数担当者に面談することが絶対条件

M&A仲介を活用する場合は、必ず複数社に相談した上で、最も信頼できる担当者と進めることを強く推奨します。どの仲介会社のアドバイザーも優秀で、クロージングトーク(早く契約させようとする言葉)を使ってきますが、早まっていいことはほとんどありません。

少しでも担当者に違和感を感じたら、契約するのをやめるべきです。実際に最悪のケースとして、仲介契約後に担当者が引き継ぎなく退職するというトラブルが起きることがあります。担当者は会社ではなく人で選ぶ、という意識が重要です。

担当者の見極めポイント

①自社の業界・規模の案件経験があるか、②質問に対して誠実に答えてくれるか、③急かしてこないか(「今すぐ決めないと」という発言は要注意)、④担当者が変わった場合のフォロー体制はどうなっているか。少しでも違和感があれば別の会社・担当者を探すことをためらわないでください。

失敗しないための注意点

①早すぎる仲介契約は最大のリスク

最初に声をかけてきた仲介会社と、その場の勢いで契約してしまうケースが最も多い失敗パターンです。特に「独占契約」を締結すると、他の仲介会社に相談できなくなります。必ず複数社に相談した後で決断してください。

②弁護士なしでの最終契約は危険

「小さな会社だから弁護士は不要」と思いがちですが、金額の大小に関わらず最終契約書には売り手に不利な条項が含まれることがあります。20〜30万円の弁護士費用は、数千万〜数億円の取引を守るための必要コストです。

③売却後の自分のポジションを明確にする

売却後も引き続き経営に関与するのか、完全に退くのかを事前に明確にしておくことが重要です。引き継ぎ期間・役員としての待遇・退任後の競業避止義務なども契約書に明記してもらいましょう。

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JP NEXT 編集部
不動産仕入営業出身 / M&Aアドバイザー実務経験者

不動産仕入営業を経て、M&A業界に転職。10社以上の選考経験と実務をもとに、売り手オーナー・転職希望者向けの実務情報を発信しています。

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