企業価値算定とは?なぜM&Aで必要なのか
企業価値算定とは、会社がどのくらいの価値を持つかを数値で表すプロセスです。M&Aにおいては、売り手と買い手が「この会社はいくらが適正か」を議論するための共通言語として機能します。
重要なのは、企業価値算定に「絶対的な正解」はないという点です。同じ会社でも算定手法や前提条件によって数字は変わります。実務では複数の手法で算定した結果を参考にしながら、最終的に交渉で価格を決めていきます。
EVは会社全体の価値(負債込み)、エクイティバリューは株主に帰属する価値(EV-純有利子負債)。M&Aの売買価格は通常エクイティバリュー=株式価値で決まります。
手法①:EV/EBITDA倍率法(最もよく使われる)
EBITDAとは「税引前利益+支払利息+減価償却費」で計算される、会社の稼ぐ力を示す指標です。EV/EBITDA倍率法は、同業他社と比較したEBITDAの何倍で買収されているかをもとに企業価値を算定します。
株式価値 = EV - 純有利子負債
純有利子負債 5,000万円の場合、株式価値 = 2億5,000万円
- 計算がシンプルでわかりやすい
- 業界相場との比較が直感的
- 中小M&Aで最もよく使われる
- 業界倍率の設定次第で大きく変わる
- 成長性が反映されにくい
- 赤字企業には使えない
手法②:DCF法(将来キャッシュフロー割引法)
DCF法は、会社が将来生み出すフリーキャッシュフロー(FCF)を現在価値に割り引いて合計することで企業価値を算定します。将来の収益力を最も直接的に評価できる手法です。
ターミナルバリューは5年以降の継続価値を算定
- 将来の成長性を価値に反映できる
- 理論的に最も正確
- 事業計画がある場合に有効
- 前提条件(WACC・成長率)で大きく変わる
- 計算が複雑
- 中小企業では事業計画が不正確なことも多い
手法③:純資産のれん法(中小M&Aの定番)
純資産のれん法は、簿価純資産に「のれん」(超過収益力)を加算して株式価値を算定する手法です。のれんは年間利益の3〜5年分程度で設定することが多く、中小M&Aで最もよく使われる実務的な手法です。
のれん = 年間利益 × のれん年数(通常3〜5年)
のれん = 3,000万円 × 4 = 1億2,000万円
株式価値 = 1億円 + 1億2,000万円 = 2億2,000万円
- 計算がシンプルで直感的
- 資産価値と収益力を両方反映
- 中小M&Aで実績が多い
- のれん年数の設定が恣意的になりやすい
- 成長性の高い会社は過少評価になることも
実務では3手法を組み合わせて使う
中小M&Aの実務では、1つの手法だけで価格を決めることはほとんどありません。EV/EBITDA法・DCF法・純資産のれん法の3手法で算定した結果をそれぞれ参考にしながら、最終的な価格レンジを設定します。
売り手は高い手法の数字を、買い手は低い手法の数字を主張することが多く、その差をどう埋めるかが交渉の核心です。アドバイザーの腕の見せ所はまさにここで、どの手法をどう使うかの説明力が価格交渉を左右します。
「3億円で売りたい」という希望と、算定で出てきた「2億円」は別の話です。希望価格を実現するためには、希望価格を裏付ける論拠(成長性・独自技術・顧客基盤など)をどう説明するかが重要です。感情論ではなく数字の根拠で話すことが成功への近道です。
業界別EV/EBITDA倍率の目安
EV/EBITDA倍率は業界によって大きく異なります。以下は中小M&A実務での参考目安です(案件規模・成長性によって大きく変動します)。
| 業種 | 倍率の目安 | 特徴 |
|---|---|---|
| IT・SaaS・ソフトウェア | 8〜15倍 | ストック収益・成長性が高く評価される |
| 医療・介護・福祉 | 6〜12倍 | 許認可・安定収益が評価される |
| 製造業 | 4〜8倍 | 技術・設備・顧客基盤が評価ポイント |
| 小売・飲食 | 3〜6倍 | 立地・ブランド・FC展開力が鍵 |
| 建設・不動産 | 3〜6倍 | 許認可・受注実績・職人の確保状況 |
| 物流・運送 | 3〜5倍 | 車両・ドライバー・路線ネットワーク |
あくまで目安であり、同じ業種でも会社の状況によって大きく変わります。正確な算定はM&A仲介会社やFAへの相談が必要です。
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