JP NEXTコラムM&A基礎 › 企業価値算定の3手法

中小企業の企業価値算定|M&Aアドバイザーが実務で使う3つの手法を解説

「自分の会社はいくらで売れるのか」——これはM&Aを検討するオーナー経営者が最初に知りたいことです。この記事では、中小M&Aの現場で実際に使われているEV/EBITDA法・DCF法・純資産のれん法の3手法を、計算例付きでわかりやすく解説します。

企業価値算定とは?なぜM&Aで必要なのか

企業価値算定とは、会社がどのくらいの価値を持つかを数値で表すプロセスです。M&Aにおいては、売り手と買い手が「この会社はいくらが適正か」を議論するための共通言語として機能します。

重要なのは、企業価値算定に「絶対的な正解」はないという点です。同じ会社でも算定手法や前提条件によって数字は変わります。実務では複数の手法で算定した結果を参考にしながら、最終的に交渉で価格を決めていきます。

EV(企業価値)とエクイティバリュー(株式価値)の違い

EVは会社全体の価値(負債込み)、エクイティバリューは株主に帰属する価値(EV-純有利子負債)。M&Aの売買価格は通常エクイティバリュー=株式価値で決まります。

手法①:EV/EBITDA倍率法(最もよく使われる)

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EV/EBITDA倍率法

EBITDAとは「税引前利益+支払利息+減価償却費」で計算される、会社の稼ぐ力を示す指標です。EV/EBITDA倍率法は、同業他社と比較したEBITDAの何倍で買収されているかをもとに企業価値を算定します。

計算式
EV = EBITDA × 業界倍率
株式価値 = EV - 純有利子負債
例)EBITDA 5,000万円 × 倍率6倍 = EV 3億円
純有利子負債 5,000万円の場合、株式価値 = 2億5,000万円
✓ メリット
  • 計算がシンプルでわかりやすい
  • 業界相場との比較が直感的
  • 中小M&Aで最もよく使われる
△ デメリット
  • 業界倍率の設定次第で大きく変わる
  • 成長性が反映されにくい
  • 赤字企業には使えない

手法②:DCF法(将来キャッシュフロー割引法)

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DCF法(Discounted Cash Flow)

DCF法は、会社が将来生み出すフリーキャッシュフロー(FCF)を現在価値に割り引いて合計することで企業価値を算定します。将来の収益力を最も直接的に評価できる手法です。

計算の考え方
EV = Σ(各年FCF ÷(1+WACC)^n)+ ターミナルバリュー
WACCは加重平均資本コスト(通常5〜10%程度)
ターミナルバリューは5年以降の継続価値を算定
✓ メリット
  • 将来の成長性を価値に反映できる
  • 理論的に最も正確
  • 事業計画がある場合に有効
△ デメリット
  • 前提条件(WACC・成長率)で大きく変わる
  • 計算が複雑
  • 中小企業では事業計画が不正確なことも多い

手法③:純資産のれん法(中小M&Aの定番)

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純資産のれん法

純資産のれん法は、簿価純資産に「のれん」(超過収益力)を加算して株式価値を算定する手法です。のれんは年間利益の3〜5年分程度で設定することが多く、中小M&Aで最もよく使われる実務的な手法です。

計算式
株式価値 = 時価純資産 + のれん
のれん = 年間利益 × のれん年数(通常3〜5年)
例)時価純資産 1億円、年間利益 3,000万円、のれん年数4年
のれん = 3,000万円 × 4 = 1億2,000万円
株式価値 = 1億円 + 1億2,000万円 = 2億2,000万円
✓ メリット
  • 計算がシンプルで直感的
  • 資産価値と収益力を両方反映
  • 中小M&Aで実績が多い
△ デメリット
  • のれん年数の設定が恣意的になりやすい
  • 成長性の高い会社は過少評価になることも

実務では3手法を組み合わせて使う

中小M&Aの実務では、1つの手法だけで価格を決めることはほとんどありません。EV/EBITDA法・DCF法・純資産のれん法の3手法で算定した結果をそれぞれ参考にしながら、最終的な価格レンジを設定します。

売り手は高い手法の数字を、買い手は低い手法の数字を主張することが多く、その差をどう埋めるかが交渉の核心です。アドバイザーの腕の見せ所はまさにここで、どの手法をどう使うかの説明力が価格交渉を左右します。

「希望価格」と「算定価格」は別物

「3億円で売りたい」という希望と、算定で出てきた「2億円」は別の話です。希望価格を実現するためには、希望価格を裏付ける論拠(成長性・独自技術・顧客基盤など)をどう説明するかが重要です。感情論ではなく数字の根拠で話すことが成功への近道です。

業界別EV/EBITDA倍率の目安

EV/EBITDA倍率は業界によって大きく異なります。以下は中小M&A実務での参考目安です(案件規模・成長性によって大きく変動します)。

業種 倍率の目安 特徴
IT・SaaS・ソフトウェア 8〜15倍 ストック収益・成長性が高く評価される
医療・介護・福祉 6〜12倍 許認可・安定収益が評価される
製造業 4〜8倍 技術・設備・顧客基盤が評価ポイント
小売・飲食 3〜6倍 立地・ブランド・FC展開力が鍵
建設・不動産 3〜6倍 許認可・受注実績・職人の確保状況
物流・運送 3〜5倍 車両・ドライバー・路線ネットワーク

あくまで目安であり、同じ業種でも会社の状況によって大きく変わります。正確な算定はM&A仲介会社やFAへの相談が必要です。

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JP NEXT 編集部
不動産仕入営業出身 / M&Aアドバイザー実務経験者

不動産仕入営業を経て、M&A業界に転職。10社以上の選考経験と実務をもとに、売り手オーナー・転職希望者向けの実務情報を発信しています。

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